DRCがコバルト輸出割当を実施
コンゴ民主共和国(DRC)は、2025年10月16日付けで新たなコバルト輸出割当制度を導入し、世界の鉱物資源管理において重要な転換点を示しました。この政策は、2025年2月に開始された8ヶ月間の輸出禁止に続くものであり、両措置は価格の安定化と、同国の重要なコバルト資源に対する戦略的支配権の確立を目的としています。市場の即時反応は顕著で、コバルト価格は2025年の安値から倍増し、広範なEV金属サプライチェーンに影響を与えました。
イベントの詳細:政策転換と市場への影響
DRCが全面的な輸出禁止から構造化された割当制度へと移行したことは、資源ガバナンスへのアプローチにおける戦略的な進化を反映しています。当初の禁止措置は、2025年初頭にコバルト価格が1ポンドあたり10ドル(1トンあたり22,000ドル)を下回り、2015年以来の最低水準に達したことに伴う価格暴落によって引き起こされました。2025年9月に割当提案が浮上して以来、水酸化コバルトおよび精製金属の価格は大幅に上昇し、2025年10月までに価格は1ポンドあたり19ドル(1トンあたり41,890ドル)に約90%反発しました。
新しい割当枠組みでは、2025年の残りの期間に18,125メートルトンの輸出を許可し、2026年と2027年の年間上限はそれぞれ96,600メートルトンに設定されています。これらの年間割当は、DRCの2024年の生産量(世界の推定生産量220,000メートルトン)の半分以下であるため、大幅な削減を意味します。割当は、2022年から2024年までの生産者の輸出量に基づいて比例配分されます。企業はまた、出荷前に月間割当と現在のコバルト価格に応じて採掘ロイヤルティを前払いすることが義務付けられています。
戦略的鉱物資源市場規制管理庁(ARECOMS)がこのシステムを管理しています。主要生産者であるCMOCグループは2025年に最大の割当を受けましたが、2026年の割当である31,200トンは、2024年のコンゴ産出量114,165トンの約27%に過ぎません。この発表後、上海取引でCMOC株は7.2%下落しました。これらの輸出制限にもかかわらず、コバルトが銅採掘の副産物であるため、記録的な銅価格に影響を受け、CMOCは生産拡大を継続する計画であり、DRC内での潜在的な在庫積み上げを示唆しています。対照的に、別の主要生産者であるグレンコアは、需要と供給のバランスをとることで市場を安定させると期待し、新システムへの支持を表明しました。グレンコアは以前、輸出制限のため2025年のコバルト生産量のかなりの部分が売れ残るだろうと警告していました。
市場反応分析:需給ダイナミクスとセクターへの影響
世界のコバルト生産量の70~77%を占めるDRCからの輸出量が大幅に減少したことは、コバルト価格の急騰を直接的に促進しました。この供給制約は、世界の需給バランスを根本的に変え、市場を2024年の50,000~105,000トンの供給過剰から、2026~2027年までに予測される供給不足へと移行させると予想されます。S&Pグローバルの分析によると、割当枠組みの遵守は市場の供給不足につながり、さらなる価格上昇を支援する可能性があります。
この変化した市場環境は、さまざまな市場参加者に明確な機会と課題を生み出しました。
- 非DRC生産者は恩恵を受ける:DRC外でコバルト事業を行う企業は、高価格と投資家の関心再燃から大きな恩恵を受ける立場にあります。ヴァーレ(NYSE: VALE)、シェリット・インターナショナル(TSX: S)、ニッケル28(TSXV: NKL)が顕著な例です。ヴァーレのカナダ部門は、合金グレードのコバルト調達を求める米国防総省から直接的な関心を集めており、サプライチェーンの多様化に向けた戦略的取り組みを浮き彫りにしています。シェリット・インターナショナルは、キューバのMoa合弁事業を通じて、2025年第2四半期のコバルト収益が前年同期比24%増加したと報告しました。これは、販売量がわずかに減少したにもかかわらず、平均実現価格が27%上昇して1ポンドあたり18.19ドルになったことによるものです。ニッケル28は、パプアニューギニアの合弁事業を通じて、2025年第2四半期に787トンのコバルトを生産しました。
- DRC生産者の調整:CMOCグループやグレンコアなどのDRC拠点の生産者は輸出量減少に直面するものの、コバルト価格の大幅な上昇により、一部の収益損失が相殺されると予想されます。しかし、採掘ロイヤルティの前払い義務と大量の在庫の可能性は、運営上および財務上の複雑さをもたらします。
広範な背景と影響:資源ナショナリズムとサプライチェーンの進化
DRCの政策は、資源ナショナリズムという広範なトレンドを表しており、鉱物資源の豊富な国が、付加価値の創出、雇用創出、産業発展など、自国の天然資源から得られる国内利益を最大化しようと努めています。このアプローチは、世界のコモディティ市場に潜在的な影響を与える可能性があり、他の国々のモデルとなる可能性があります。
コバルト供給の制約は、2026年中頃までにバッテリー材料サプライチェーン全体で深刻な不足を引き起こすと予想されており、電気自動車メーカー、バッテリー生産者、電子機器企業に対し、サプライチェーンの多様化努力を加速させる緊急の圧力をかけています。この状況は、統合されたサプライチェーンとコバルト効率の高いバッテリー化学への技術投資の重要性が高まっていることを強調しています。
主な影響は以下の通りです。
- 技術の多様化:コバルト価格の高騰は、特に中国のEVメーカーの間で、リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーなどのコバルトフリー化学への移行を加速させています。テスラ(Tesla)(TSLA)とBYDは、すでに一部のモデルでLFPバッテリーを採用しているか、採用する予定です。高ニッケル**ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)**のような低コバルト配合や、ナトリウムイオンバッテリーのような代替材料の研究開発も増加しています。
- サプライチェーンの再構築:企業は、重要な鉱物供給を確保するために、垂直統合、鉱山資産への直接投資、複数のサプライヤーとの長期契約を追求しています。オーストラリアやカナダのような政治的に安定した管轄区域における、以前は限界的だったコバルトプロジェクトの経済的実行可能性が向上し、その開発を促進しています。
- 地政学的な変化:**米国のインフレ削減法(IRA)**は、国内のEVおよびバッテリー生産を奨励し、海外サプライチェーンへの依存度を低減することを目的としています。2025年1月1日までに、米国の自動車メーカーは「懸念される外国事業体」から調達されたコバルトを含む重要な鉱物を使用することを禁止されます。中国自身の高性能リチウムイオンバッテリーに対する輸出規制は、バッテリー材料生産における世界的な自給自足の動きをさらに強調しています。
専門家のコメントと展望
市場アナリストと業界リーダーは、これらの動向を綿密に監視しています。CMOCグループの最高商業責任者であるケニー・アイヴスは、現在の価格が「代替技術への移行を余儀なくされない限り、人々が許容できる上限にある」と警告しました。対照的に、ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスの研究責任者であるウィリアム・タルボットは、LFPバッテリーの台頭にもかかわらず、特に西側市場ではNCM化学が依然として重要であり、「市場には両方の化学が共存する余地がある」と示唆しました。
マッコーリー・グループ・リミテッドは、割当の厳格な遵守が2026年中頃までに材料不足を引き起こし、潜在的に価格を2022年のピークを上回る水準に押し上げる可能性があると警告しています。CICCは、2025年から2027年にかけて需給バランスが持続的に逼迫すると予測しており、コバルト平均価格の体系的な上昇と価格変動の悪化につながる可能性が高いとしています。
今後、世界のコバルトセクターは、DRCの割当実施の厳格さ、世界経済状況、およびバッテリー化学における技術進歩の速度に引き続き影響を受けるでしょう。コバルト協会は、世界の需要が2025年に4%、2026年に6%増加すると予測しています。DRC外での新規で倫理的かつ安定したプロジェクトへの投資と、バッテリーリサイクル技術の継続的な開発は、長期的な供給状況を形成し、重要な鉱物サプライチェーンの回復力を確保する上で極めて重要な要素となるでしょう。
ソース:[1] 2025年10月16日にDRCコバルト輸出割当制度が開始されたことに伴うコバルト部門の最新情報 (https://seekingalpha.com/article/4831208-upda ...)[2] コンゴのコバルト輸出割当、世界のバッテリー供給市場を再編 - ディスカバリーアラート (https://vertexaisearch.cloud.google.com/groun ...)[3] コバルト価格の反発:コンゴの輸出規制がバッテリー業界をどのように再編するか - ディスカバリーアラート (https://vertexaisearch.cloud.google.com/groun ...)