米国の財貿易赤字は5月に1058億ドルに拡大し、1年超ぶりの高水準となった。産業用供給品や原油の輸出が落ち込み、輸入の伸びを上回った。
米国の財貿易赤字は5月に1058億ドルに拡大し、1年超ぶりの高水準となった。産業用供給品や原油の輸出が落ち込み、輸入の伸びを上回った。

米財貿易赤字は5月に1年超ぶりの高水準に拡大した。商務省が4日発表したデータによると、産業用供給品や原油の輸出が5.4%減少した一方、輸入は穏やかな増加にとどまったことが要因。
財の貿易赤字は前月比27.4%拡大し1058億ドルとなり、ブルームバーグがエコノミストを対象に調査した中央値850億ドルを大幅に上回った。輸入は3.6%(109億ドル)増の3134億ドル、輸出は118億ドル減の2077億ドル。
輸出の減少は広範囲に及び、原油や石油製品を含む産業用供給品、消費者財、資本財が主な落ち込み分野だった。インフレ調整前のデータで、国内消費が輸入数量を高水準に維持する一方、米国産財に対する海外需要の弱まりを示唆している。
貿易は2四半期連続で国内総生産(GDP)の重しとなっており、5月の数値はエコノミストが第2四半期の成長率見通しを下方修正するリスクを高めている。GDPトラッキングモデルは年率2.5%程度で収束しつつあり、第1四半期の2.1%、昨年10~12月期の0.5%から減速している。
輸出の弱さ、広範な軟調さを示唆
財輸出の月間減少率5.4%は2025年初頭以来最大で、主要貿易相手国からの需要軟化を示している。米財輸出の約4分の1を占める産業用供給品が最大の下押し要因となり、世界のエネルギー価格低下を受けて原油・石油製品の出荷が減少した。
ブレント先物は4日に3.3%安の1バレル=72.76ドル、週間では約9.7%安となる見通し。ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は3%安の69.77ドル。エネルギー価格の下落は米石油輸出のドルベースの価値を押し下げ、世界需要の軟化による数量影響に拍車をかけている。
消費者財の輸出も減少し、高い金利に依然苦しむ経済圏での購買力低下を反映。機械や産業設備を含む資本財も小幅ながらマイナス寄与となった。
輸入増加は予防的な在庫積み上げを反映
輸入面では3.6%の増加は、中東紛争に関連する供給混乱や価格高騰に備え、企業が中間財や原材料の購入を前倒ししたことによる。輸入急増により赤字はコンセンサス850億ドルを大きく上回り、2025年初頭以来の最大の財貿易赤字となった。
この動きは過去の地政学ショック時と同様のパターンで、企業が在庫バッファーを積み上げるために輸入を前倒しした。財貿易赤字が1000億ドルを超えたのは、前回は2025年第1四半期で、この時も企業は関税引き上げに先立ち同様の在庫積み上げを行っていた。
GDPと政策への影響
貿易赤字の拡大は第2四半期GDPの逆風となり、純輸出が成長計算から控除される。アトランタ連銀のGDPNowなど各種ナウキャストモデルは2.5%程度の成長を示していたが、5月の貿易データによりこれらの予想は下方修正される可能性がある。財赤字だけでコンセンサスを208億ドル上回ったことは、6月までこの傾向が続けば第2四半期の最終GDPから0.3~0.5ポイント程度を削る可能性がある。
米連邦準備制度(FRB)にとっては、このデータは複合的なシグナルとなる。輸出需要の弱さは世界経済の冷え込みを示し、年内の利下げ論拠を強化する可能性がある。しかし輸入の強さ、ひいては内需の底堅さは、米国経済がなおトレンドを上回って推移していることを示唆し、当局者が現状維持を続ける理由となる。翌日物金利スワップ市場では、12月までに0.25ポイントの利下げが2回実施されるとの見方が織り込まれており、次回FOMCは7月29~30日に予定されている。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。