米国で6月の雇用者数はわずか5万7000人増にとどまり、コンセンサス予想の半分以下となった。これを受け、株式は上昇、米国債利回りは低下し、トレーダーらはFRBが政策緩和を余儀なくされるとの見方を強めている。
米国で6月の雇用者数はわずか5万7000人増にとどまり、コンセンサス予想の半分以下となった。これを受け、株式は上昇、米国債利回りは低下し、トレーダーらはFRBが政策緩和を余儀なくされるとの見方を強めている。

米国で6月の雇用者数は5万7000人増と、コンセンサス予想の11万人増を大きく下回った。同時に過去2カ月分の数値が合計7万4000人下方修正され、急速な冷え込みを示す内容となった。これを受け、株価先物は上昇し、10年物米国債利回りは4ベーシスポイント低下して4.47%となった。
「予想外に強かった5月を経て、労働市場は明らかに勢いを失いつつある。これによりFRBは利上げサイクルを一時停止する余地を得た」と、Edgebyのマクロアナリスト、ジェームズ・オカフォー氏は指摘。「問題は、これがトレンドなのか、それとも1カ月限りの変動なのかだ」。
雇用者数の伸びが急減速する一方、失業率は4.3%から4.2%へと低下した。平均時給は前月比0.13ドル上昇し、前年比の伸びは3.5%に達した。平均週労働時間は34.3時間で横ばいだった。専門・ビジネスサービス業が3万6000人増と、増加の大半を占めた一方、製造業はわずか3000人増にとどまった。5月に増加を牽引したレジャー・ホスピタリティ業は減少に転じた。
今回の予想外れはFRBの政策判断の枠組みを塗り替えるものだ。発表前、CMEのフェドウォッチデータによれば、9月までの利上げ確率は63%だった。この確率は現在、下方圧力にさらされている。7月または8月の指標が今回の減速を裏付けるものとなれば、FRBの議論の焦点は「どこまで利上げするか」から「いつ利下げするか」へと移行する可能性がある。そうなれば、株式相場をさらに押し上げ、ドル相場を圧迫する展開となる。
米労働統計局(BLS)は5月の雇用者数を4万3000人下方修正して12万9000人、4月を3万1000人下方修正して14万8000人とした。これにより3カ月移動平均は18万8000人から11万1000人に低下した。民間産業全体の採用の広がりを測るBLSディフュージョン・インデックスは56%から54.4%に低下したが、製造業は52.8%から55.6%に上昇し、トレンドに逆行した。
雇用統計がこれほど大きくコンセンサスを下回ったのは、2024年8月以来となる。当時、雇用者数は予想16万人増に対し8万9000人増にとどまった。この報告を受け、その後2週間で10年物国債利回りは50ベーシスポイント低下、S&P500種株価指数は2.3%上昇し、利下げ観測が強まった。
金は1.6%上昇し1オンス当たり4094.45ドルとなった。弱い雇用統計と、先週水曜日にECBフォーラムで発言したFRBのケビン・ウォーシュ議長が「ここ数週間でインフレ期待とリスクは緩和した」と述べ、タカ派色を弱めたことを背景にしている。原油は3営業日連続で下落。カタールがイランと米国がホルムズ海峡を巡る間接協議で進展があったと表明したことが材料視され、原油価格の低下がインフレ懸念をさらに和らげている。
株式市場にとって、今回のデータはゴルディロックス・シナリオ(適温相場)を示している。利下げ観測を再燃させるほど弱いが、リセッション(景気後退)を示すほどの弱さではない。S&P500とナスダックはともに上昇して寄り付き、不動産や公益事業など金利に敏感なセクターが上昇を主導した。FRBの政策期待と密接に関連する2年物国債利回りは長期ゾーンよりも大幅に低下し、短期金利見通しの再評価を反映した。
FRBにとって次に重要なデータは、8月7日発表予定の7月雇用統計、続く9月13日発表の8月消費者物価指数(CPI)となる。両指標とも軟化傾向を確認する内容であれば、市場は早ければ9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での初回利下げを織り込み始める可能性がある。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。