主なポイント:
- イーロン・マスク氏の純資産が1.4兆ドルに達し、ビットコインの時価総額1.31兆ドルを突破
- SpaceXのIPO後の急騰により、同氏の資産は1日で1017億ドル増加
- この節目は、富の集中と社会保障税の上限を巡る政策論争を再燃させる
主なポイント:

イーロン・マスク氏は、SpaceXの大型IPOにより1日で1000億ドル以上の資産が増加し、ビットコイン市場全体の時価総額を上回る資産を持つ初めての人物となった。
マスク氏の純資産は6月16日に1.4兆ドルまで急騰し、ビットコインの時価総額1.31兆ドルを突破。SpaceX株がIPO後の上昇基調を維持したことが背景にある。
「これほどの規模の富の創出は前例がなく、一人の個人がS&P500構成企業の大半よりも大きな価値を保有している」と、Wealth-Xの富裕層調査責任者サラ・ミラー氏は述べた。
1017億ドル(7.91%増)という1日の増加額は、SpaceXのさらなる上昇が原動力となった。同社は6月12日に史上最大のIPOを完了し、その後も8.59%上昇。時価総額は初日の取引終了時の2.2兆ドルから2.8兆ドルに膨らんだ。マスク氏は約42%の株式を保有しており、SpaceXの株価が1%上昇するごとに、同氏の個人資産は約120億ドル増加する計算となる。
今回の節目は、今後激しさを増すとみられる富の集中を巡る議論を鮮明にしている。バーニー・サンダース上院議員はこの機会を捉え、マスク氏が年収18万4500ドル(2026年の社会保障税課税上限)の労働者と同額の社会保障税しか支払っていないと指摘。マスク氏の約64億株のロックアップが2027年6月に期限を迎えることもあり、政治的・市場的な影響はなお不透明だ。
SpaceXのAIシフトが評価額を押し上げ
SpaceXの評価額急騰は、事業構成の根本的な変化を反映している。ロケット会社としてスタートした同社は現在、最大の収益源をAIインフラから得ている。PitchBookによれば、AnthropicおよびGoogleとのコンピュート契約に基づく収益は年換算で約260億ドルに上る。発射事業とStarlinkコネクティビティ事業は、2025年の売上高の61%を占め、EBITDAマージンは63%で、その評価額は約1.5兆ドル。残りの約1兆ドルは、90日間の通知で解約可能な契約に紐づくAIプレミアムとみられている。
同社の信頼性台帳(これまでの51の公約を追跡)は一貫したパターンを示している。すなわち、SpaceXは約束したことは実現するが、期限通りに完了することはほとんどない。PitchBookによると、解決済みの41の公約のうち66%は最終的に達成されたが、期限内に完了したのはわずか17%で、平均遅延期間は26.6カ月に上る。
富裕層格差が歴史的水準に拡大
マスク氏の1.4兆ドルの資産は、ラリー・ペイジ氏(3000億ドル)、セルゲイ・ブリン氏(2773億ドル)、ジェフ・ベゾス氏(2565億ドル)、ラリー・エリソン氏(2427億ドル)の合計資産をも上回る。世界一の富裕層とその追従者との差は、ほぼ理解不能な水準にまで拡大している。
この節目はまた、政策論争を再燃させた。サンダース氏の「社会保障拡大法」は、25万ドルを超える給与に対する社会保障税の上限を撤廃し、キャピタルゲインにも課税する内容で、資産のほとんどを賃金ではなく株式保有に依存するマスク氏に直接的な影響を与えることになる。
今後の展望
4.2%という薄い初回公開株式数(フロート)を考慮すると、SpaceX株のボラティリティは高い状態が続くとみられる。PitchBookは、四半期決算よりもマイルストーンに左右される20〜30%の変動を予想しており、これはテスラの初期の取引パターンと類似している。次の主要な触媒は、2027年6月13日頃に期限を迎えるロックアップ期間終了で、マスク氏の約64億株が売却可能となる。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。