主なポイント:
- EUR/USDは、ECBの引き締めバイアスがFRBの高金利長期化スタンスを相殺し、サポートを維持
- 5月の米雇用統計(NFP)は、4月の11万5000件から8万件に減少見込み
- 中東情勢の緊迫化と金利政策の乖離が、ユーロ/ドルに二方向のリスクをもたらす
主なポイント:

EUR/USDは金曜日の米雇用統計発表を前に底堅さを示している。欧州中央銀行(ECB)が引き締めバイアスを維持する一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を高水準に維持する姿勢を示すなか、投資家は中央銀行の政策乖離をにらんだポジショニングを続けている。
「ECBのハト派姿勢がユーロに下支えを提供している一方、ドルは中東情勢の緊迫化に伴う安全資産需要から恩恵を受けている。市場は、雇用統計の結果次第でFRBのスタンスが強化されるか、軟化への道が開かれるかという二方向のリスクを織り込んでいる」と、エッジンの中央銀行・マクロアナリスト、ジェームズ・オカフォー氏は指摘する。
ドルは金曜日に2カ月ぶりの高値圏で推移。ドルインデックスは週間で上昇基調にある。中東での紛争激化 – イランとの核協議の停滞やヒズボラによるイスラエルとの停戦拒否 – がドル需要を押し上げている。ユーロと英ポンドは対ドルでほぼ変わらず。ドル/円は心理的節目の160円を目前に推移し、日本当局からは介入の可能性に対する警告が続いている。
ダウ・ジョーンズ・ニュースワイヤーとウォール・ストリート・ジャーナルがまとめたエコノミスト予想では、5月の米雇用者数は8万人増と、4月の11万5000人増から減少する見込み。失業率は4.3%で横ばいと予想されている。FRBは2023年7月以降、フェデラル・ファンド金利を5.25~5.50%に据え置いており、雇用統計が予想を上回れば、年内後半も同水準を維持する根拠が強まる。翌日物金利スワップ市場では、6月17~18日のFRB会合での金利据え置き確率は62%と織り込まれている。
対照的にECBは、ユーロ圏経済の減速が顕著になるなかでも、根強いインフレ圧力により引き締め継続を迫られている。ECBは5月の会合で預金金利を0.25ポイント引き上げ4%とし、市場は7月の追加利上げ確率を高く見積もっている。FRBが据え置き、ECBが利上げを継続するという政策の乖離は、両通貨にそれぞれ上昇要因が存在するという異例の構図を生み出し、EUR/USDはレンジ相場に留まっている。
ECBがFRBの据え置き局面でこれほど持続的な引き締めバイアスを示したのは、直近では2023年第2四半期。当時、EUR/USDは3カ月間にわたり1.06~1.10ドルのレンジで推移した後、上抜けした。同様のパターンが繰り返されるかどうかは、米雇用統計がFRBのガイダンスを変更させるほど軟化するか、あるいは中東由来のインフレリスクが両中央銀行に引き締めスタンスの維持を強いるか次第となる。
インド・ルピーは金曜日に主要通貨で最も強いパフォーマンスを記録。インド準備銀行(RBI)が金利を据え置く一方、インフレ見通しを上方修正し、自国通貨投機に対する警戒姿勢を示したことを受け、USD/INRは急落した。豪ドルは小幅に軟化。中国元は概ね安定していた。
EUR/USDにとって、雇用統計は二方向のリスクイベントとなる。結果が10万件を超えれば、ドル高・FRBスタンス強化により1.07ドルのサポートゾーンに押し込まれる可能性が高い。一方、5万件を下回る弱い結果となれば、ECBのタカ派姿勢と相まって1.10ドル方向への上昇が想定される。中東紛争に終息の兆しは見えず、原油価格がインフレ懸念を増幅させるなか、両中央銀行の政策経路はデータ次第となり、2026年後半に向けた不透明感が続いている。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。