バイナンスの欧州責任者ジリアン・リンチ氏は、MiCAの成功は規制対象外となった企業の数ではなく、規制システムに取り込まれた企業の数で測るべきだと述べた。
バイナンスの欧州責任者ジリアン・リンチ氏は、MiCAの成功は規制対象外となった企業の数ではなく、規制システムに取り込まれた企業の数で測るべきだと述べた。

バイナンスはギリシャでのMiCAライセンス申請を7月1日期限の数日前に撤回し、世界最大の暗号資産(仮想通貨)取引所は、数カ月にわたる規制上の遅延を経て、欧州連合(EU)ユーザー向けの規制対象サービスを停止せざるを得なくなった。
「MiCAの成功とは、規制が存在することなのか、それとも事業者が規制対象となることなのか」。バイナンスの欧州・英国責任者ジリアン・リンチ氏はインタビューでこう問いかけた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は7月1日、欧州証券市場監督機構(ESMA)が非公開の形で各国規制当局に対し、バイナンスの申請を承認しないよう助言していたと報じた。その理由として、金融犯罪関連規則のコンプライアンスに関する懸念を挙げている。リンチ氏はこの報道を否定し、問題の口座については、取引所が不審な活動を特定した時点で直ちにオフボードし、法執行機関に報告したと述べた。
リンチ氏は、バイナンスを排除すれば、重要な流動性とインフラが失われ、欧州の暗号資産市場に打撃を与えると主張。同社は引き続き他の加盟国で新たなライセンスを取得することに注力しているとし、「欧州から撤退するつもりはない」と述べた。
頓挫したギリシャでの申請
リンチ氏によれば、バイナンスは4月にギリシャのヘレニック資本市場委員会(HCMC)から申請が完了したとの通知を受けた後、6月初旬の承認を予定していた。しかし取締役会は繰り返し延期され、最終的にバイナンスは6月24日に申請を撤回。これにより、7月1日の期限の10日足らず前という、同社が内部で想定する30日前の通知期間を大幅に下回るタイミングで、影響を受けるユーザーへの通知を余儀なくされた。
「我々の申請は完了したと見なされていた。欠落もなく、未解決の重要事項もなかった」とリンチ氏は述べた。
バイナンスは年間3億ドル(約460億円)以上をコンプライアンスに投資し、グローバルで1500人以上のコンプライアンススタッフを擁しているとリンチ氏は説明。彼女自身は暗号資産業界に参入する前、約20年にわたり伝統的な銀行業務や金融サービスに従事しており、規制当局が認可金融機関に何を求めているかを理解していると語った。HCMCはバイナンスのMiCAライセンス申請プロセスに関するコメント要請に応じなかった。
市場への影響と今後の展望
EUで登録されている約3000の仮想資産サービスプロバイダーのうち、ほぼ80%がMiCA導入後は生き残れない可能性があると、OKX EuropeのCEO、エラルド・ゴース氏は指摘する。その結果、1000万人以上のユーザーがMiCA承認プラットフォームに移行する必要が生じる可能性があると、Swissborgのアレックス・ファゼル氏はCoinDeskに語った。
Kaikoのデータによると、2026年6月時点で、MiCAライセンスを取得した取引所が欧州の取引量の約83%を占めており、バイナンスの不在が大きな影響を与える可能性は限定的であることを示唆している。それでもリンチ氏は、バイナンスが規制の枠組みの外に留まるのであれば、欧州の暗号資産市場は最大の取引所を失う以上の損失を被ると主張した。
バイナンスはEU顧客に対し、資産は1対1の割合で安全に保管されており、引き出しは引き続き可能であると説明。また、新規登録、スポット取引注文、入金、Earn商品、ステーキングサービス、Launchpool商品をEUユーザー向けに制限している。CEOのリチャード・テン氏は、影響を受ける顧客が移行期間を乗り切れるよう支援することに尽力していると述べた。
リンチ氏は、政治的な介入が遅延の原因となったとの報道について憶測を拒否。現在は、移行期間中のユーザー支援と、別のEU加盟国での新たなライセンス戦略の準備に注力していると述べた。
「私は暗号資産業界が成熟しつつあると確信している。規制は成熟をもたらす。この業界は今後も存続し、金融サービスエコシステムの一部となる」とリンチ氏は語った。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。