日本銀行の高官が、世界最後となるマイナス金利政策の終了の可能性を示唆した。この動きは世界の金融市場に波紋を広げる可能性がある。
日本銀行の高官が、世界最後となるマイナス金利政策の終了の可能性を示唆した。この動きは世界の金融市場に波紋を広げる可能性がある。

日本銀行の小枝純子審議委員は、中央銀行は「適当なペース」で金利を引き上げることを検討すべきだと述べ、日本の基調的なインフレ率はすでに2%の目標付近にある可能性が高いとの見解を示した。福岡市内での講演で行われたこのタカ派的な発言は、早ければ来月にも利上げが行われる可能性に向けて機運が高まっていることを示唆しており、実現すれば長年にわたる超金融緩和政策に終止符を打つことになる。
「中東情勢を踏まえると、先行き基調的なインフレ率が2%を超える可能性もあると見ている」と、小枝氏は経済界のリーダーらを前に行なった講演で語った。「高いインフレへの対応と経済へのトレードオフを考慮しつつ、適切なペースで政策金利を引き上げていくことが合理的だと考えている」
小枝氏によると、今回の発言は、需給ギャップがプラスに転じ、IT製品への世界的な需要が強いなど、日本経済に回復の兆しが見える中で行われた。同氏は、最近の長期的な期待インフレ率の緩やかな上昇に注意を払う必要があると指摘した。現在の政策金利は、2016年初めの最後の利下げ以来維持されている-0.1%に留まっている。小枝氏の講演後、円は対ドルで上昇し、市場がより積極的な政策運営を織り込み始めたため、日本国債(JGB)の利回りも上昇した。
日本銀行によるマイナス金利からの脱却は、世界的に大きな影響を及ぼすことになる。長年、投資家は低コストの円をキャリートレードの資金調達通貨として利用してきた。つまり、円で資金を借り入れ、海外の高利回り資産に投資してきたのである。利上げは借入コストを増大させ、こうしたトレードの巻き戻しを引き起こす可能性があり、米国債から新興国株式に至るまで、世界の資産の売りを誘発する恐れがある。次回の決定会合は6月15日に予定されており、政策変更に対する市場の期待は高まっている。
小枝氏のコメントは、中央銀行が政策スタンスの正常化に向けて準備を進めているという、これまでで最も明確なシグナルの1つとなった。同氏は、実質金利を大幅なマイナスの状態に維持し続けることの「弊害」に留意すべきであり、それが長期的には経済の資源配分を歪める可能性があると主張した。
利上げの根拠は、これまでのところ大きな景気後退を免れている国内経済によって支えられている。小枝氏は、好調な世界のIT需要と、実際の経済出力が潜在力を上回るプラスの需給ギャップが、政策正常化のための安定した基盤を提供していると自信を示した。「経済が大きな落ち込みを見せないようであれば、実質金利のさらなる低下による副作用に、より注意を払う必要がある」と同氏は述べた。
この見方は、日本が数十年間にわたり苦しんできたデフレの連鎖からついに脱却しつつあるという、高まりつつあるコンセンサスと一致している。小枝氏が言及した中東での紛争の長期化は、外部からのインフレ圧力を加え、消費者物価を日銀が長年達成できなかった2%の目標を、持続可能な形で超えさせる可能性がある。
日銀の政策転換の影響は、日本国内に留まらない。円高は日本の輸出企業の利益を減少させ、日経平均株価の重石となる可能性がある。さらに重要なのは、マイナス金利の終了が、世界の金融システムの主要なアンカー(錨)の1つを失わせることである。
前回、日本銀行が超緩和政策からの脱却を試みた際には、市場に大きな混乱を招いた。世界中の投資家は、フォワードガイダンスや政策金利自体に具体的な変更があるかどうか、6月の会合を注視することになるだろう。利上げの実施、あるいは将来の利上げに向けたより明確なシグナルだけでも、永続的に低コストな日本円に依存してきた資本の流れを塗り替える可能性がある。